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提携司法書士による二次被害の増加

このところ、提携司法書士が増加している背景には、司法書士法が改正されて二〇〇三年四月一日より、法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所の訴訟代理権を取得できることになったことがある。簡易裁判所の訴訟代理権を取得した司法書士は、「認定司法書士」と呼ばれているが、このような司法書士が多重債務者から債務整理の依頼を受けて受任通知を出すと、貸金業法二一条の取立行為規制により貸金業者の多重債務者本人への取立行為が禁止される。この結果、これまでは弁護士が行ってきた任意整理を、認定司法書士も行うことが可能となった。このため整理屋は、認定司法書士と提携して、認定司法書士の名前で受任通知を出せば、貸金業者の取立てを止めさせることができるので、弁護士だけでなく認定司法書士も利用するようになってきたのである。

弁護士業務広告が解禁される前は、多重債務者を取り込むのは主に紹介屋の役割であった。これまでの紹介屋の多くは、新聞の折込広告、電話ボックスのチラシ、スポーツ新聞、夕刊紙、雑誌、インターネット等で「借人件数多い方でも即刻融資」「低利切替一本化」などと金融業の広告を出して多重債務者を集め、提携弁護士・提携司法書士の事務所に多重債務者を紹介して、多重債務者一人当たり五~一〇万円の紹介料を受領していた。ところが、最近の紹介屋の多くは、NPO法人の認証を取得して、「一人で悩んでいませんか」「借金苦解決」「ヤミ金苦解決」などと宣伝して多重債務者を集め、提携弁護士・提携司法書士の事務所に多重債務者を紹介して紹介料を受領するようになってきている。

これらのNPOの中には、図々しくも各地の消費者センターにチラシやポスターの配備を要請するNPOも出てきている。このような紹介屋や前述した整理屋の一部は、暴力団の資金源になっている。紹介屋が多重債務者を提携弁護士や提携司法書士の事務所に紹介して紹介料を受領したり、弁護士資格のない整理屋が債務整理事件を受任して手数料を受領することは、弁護士法七二条違反となり、二年以下の懲役または三〇〇万円以下の罰金に処せられることになっている。また、これらの紹介屋と提携している弁護士・司法書士も、弁護士法二七条または七二条違反となり、二年以下の懲役または三〇〇万円以下の罰金に処せられることになっている。二〇〇〇年には東京で七人の提携弁護士が弁護士法違反(非弁護士との提携)で逮捕されたが、提携弁護士はいまだ根絶されておらず、最近では、東京以外の弁護士会にも提携弁護士が広がる傾向にある。

二〇〇八年二月には、大阪弁護士会の弁護士二人が弁護士法違反(非弁護士との提携)で逮捕されている。また、二〇〇七年五月三〇日には、警視庁保安課が整理屋グループー人を弁護士法違反(非弁行為)容疑で逮捕している。この整理屋グループは、NPO法人の認証を取得して活動しており、債務者から債務整理の報酬を受け取る一方で、毎月約一〇〇万円の名義貸料を弁護士に支払っていたということである。提携弁護士・提携司法書士事務所におけるクレサラ事件処理に関しては、クレサラ業者から返還を受けた過払金を依頼者にまったく返還しなかったり、依頼者からの預り金の一部を横領するといったトラブルが多発している。このように、整理屋・紹介屋・提携弁護士・提携司法書士による被害が急増しているので、弁護士や司法書士を知らない多重債務者は、地元の弁護士会や司法書士会の相談窓口で弁護士や司法書士を紹介してもらうのが安全・安心である。

多重債務者を食い物にする提携弁護士

多重債務者のクレサラ事件の処理に関し、整理屋や紹介屋と提携するいわゆる提携弁護士は、東京の三弁護士会所属の弁護士を中心に一〇〇人以上は存在するといわれている。提携弁護士の事務所には、通常整理屋が入り込んでおり、紹介屋などから紹介を受けた多重債務者のクレサラ事件は整理屋が中心となって処理している。このため、提携弁護士の事務所では、提携弁護士はほとんど多重債務者と面談しないか面談するとしてもほんの四~五分程度である。提携弁護士の事務所では、事務所経営の主導権も整理屋が握っていることが多く、提携弁護士には整理屋から顧問料名目で名義貸料「月額五〇」二〇〇万円位が相場といわれている)が支払われている。

提携弁護士の事務所では、平均して年間一千人近くの多重債務者のクレサラ事件を取り扱っている。提携弁護士の多くは東京に集中しているのであるが、提携弁護士の事務所に債務整理を依頼している多重債務者の大半は東京都民以外の多重債務者であり、北海道から九州沖縄まで日本全国に及んでいる。提携弁護士の事務所では、大量のクレサラ事件を取り扱っているため多くの事務員を雇っており、多いところでは一つの提携弁護士の事務所で一〇〇人以上の事務員を雇っている事務所も出現してきている。日弁連が、二〇〇〇年一〇月一日より弁護士業務広告を原則解禁(自由化)したため、このところ提携弁護士の広告が急増している。

二〇〇二年七月四日に東京弁護士会より非弁提携(懲戒事由は弁護士業務広告解禁前の紹介屋提携である)を理由として退会命令の懲戒処分を受けたK弁護士は、アルバイトを含めると一〇〇人近くの事務員を雇い約七千人もの多重債務者のクレサラ事件を取り扱っていたのであるが、多重債務者からの預り金のうち約五億五千万円の返還が不能となり、二〇〇三年三月三一日に東京地方裁判所より破産宣告を受けている。このK弁護士は、弁護士業務広告解禁後、JR、私鉄、地下鉄、都バス、日刊スポーツ、毎日新聞、週刊実話、週刊大衆、週刊漫画、インターネットなどで大量の弁護士広告を行って多重債務者を集めていた。

現在、首都圏のJRや私鉄、地下鉄、インターネット、新聞の折込広告、スポーツ新聞、夕刊紙、週刊誌などに出されている弁護士広告の大半は、「借金苦解決」「一人で悩まず今すぐ相談を」「サラ金・クレジットの債務整理やります」などと債務整理を強調する提携弁護士の広告となっている。また、東京の提携弁護士が地方紙の折込広告などに広告を出すケースも目立ってきている。最近、首都圏では、クレサラ事件の提携弁護士であった弁護士が、債務整理と同時に先物取引事件の業務広告を出すケースが少し目立つようになってきているが、多重債務整理事件や先物取引事件以外の借地借家、離婚、相続などの一般民事事件の弁護士業務広告や刑事事件の弁護士業務広告はほとんど見受けられないのが実情である。

自殺・夜逃げ・ホームレス・犯罪の原因となっている多重債務

弁護士会や司法書士会、日本司法支援センター(愛称・法テラス)などの適切な相談窓口を知らない多重債務者の中には、債権者の過酷な取立てや多重債務を苦にして、自殺や夜逃げをする多重債務者も少なくない。警察庁のまとめによれば、二〇〇八年の全国の自殺者数は三万二二四九人となっており、一一年連続で三万人を超えたということであるが、そのうち経済・生活苦による自殺者は、七四〇四人となっているということである。したがって、自殺者のうち四・三人に一人は、経済・生活苦による自殺者ということになる。

経済・生活苦の自殺者の中には、多重債務を苦にした自殺者が多数含まれている。多重債務者の夜逃げは、年間十数万人に上るといわれている。借金苦で家出や夜逃げをしている多重債務者の多くは、通常住民票を移動させずに逃げている。もし、住民票を移動させると、行方不明者の住民票の移動を恒常的に監視しているサラ金・クレジット業者の管理部門の担当者に居場所が分かってしまい、再びサラ金・クレジット業者の厳しい督促・取立てを受けることになるからである。夜逃げをしている多重債務者は、住民票を移動させていないため、まともな職に就けず、健康保険にも加入することができない。夜逃げをして不安定な生活を強いられている多重債務者の中には、ホームレスやネットカフェ難民になる人も少なくない。

厚生労働省が二〇〇七年一月に実施した調査によれると、路上や公園などに寝泊まりしているホームレスの数は、一万八、五〇〇人に上っているということである。また、二〇〇七年八月二八日、厚生労働省の実態調査で、住居がなくネットカフェや漫画喫茶などに寝泊まりする「ネットカフェ難民」が、約五四〇〇人に上っていることが明らかとなっている。ネットカフェ難民の大半は、アルバイトや旦雇い派遣など不安定な雇用を余儀なくされている非正規労働者ということである。多重債務を原因とする犯罪も多発しており、児童虐待や家庭内暴力(DV)の背景にも多重債務問題があることが多いといわれている。

多重債務被害の現状

返済困難に陥った多重債務者を放置していたら貸倒れとなってしまうので、貸倒れを少しでも減らすために、不良債権の回収を行う管理部門の担当社員にもノルマが課されているのが一般的であった。このことが、サラ金業者の過酷な取立ての要因となっていた。二〇〇六年四月一四日には、サラ金大手のアイフルが、債務者本人や債務者の親族に対する違法取立てを理由に全店舗業務停止の行政処分を受けている。

また、二〇〇七年四月四日には、サラ金準大手の三和ファイナンスが、千葉支店の担当者が親族に返済させるよう借り手に求め一緒に車に乗ることを強要して親族宅に同行した、本社の担当者が借り手の家への電話で「子どもを学校に送っていて不在」と告げた妻に「学校名を教えろ」と迫った、過払い利息の返還で証拠となる取引履歴がないとうそをついた、和解で借金を棒引きしだのに取り立てたなどの貸金業規制法違反行為があったとして、全店舗業務停止の行政処分を受けている。

前述のように、二〇〇六年一二月一三日に成立した新貸金業法では、本体施行(二〇〇七年一二月一九日)から二年半以内、新貸金業法の公布からおおむね三年を目途に貸金業規制法四三条の「みなし弁済規定」(グレーゾーン金利)を撤廃し、出資法の上限金利を年二九・二%から年二○%に引き下げ、利息制限法の制限金利(年一五~二〇%)を超える金利での貸付けは禁止されることになっている。したがって、新貸金業法の完全施行後は、サラ金は、利息制限法の制限金利(年一五~二〇%)を超える貸付けができなくなる。

多重債務者は、自分の収入では借金の返済ができなくなっている。返済しないとクレジット・サラ金業者から厳しい取立てを受けることになり、特に職場に取立ての電話があれば職場に居づらくなる。このような状態に陥った多重債務者の多くが、借金返済のために新たにサラ金から借金したりクレジットカードによるキャッシッグをするという自転車操業を繰り返している。自転車操業を繰り返せば、多重債務者の債務はますます雪だるま式に膨れ上がることになる。

依然として二〇〇万人を超えて存在する多重債務者

サラ金系の信用情報機関である全情連によれば、二〇〇九年三月現在、債務を抱えている利用者は約一〇八四万一千人ということである。国民の一〇人に一人がサラ金の債務を抱えていることになる。わが国におけるクレジットカードの発行枚数は、二〇〇八年三月末現在三億八五九万枚に上っており、国民一人あたり二・四枚のクレジットカードを保有している計算となる。全情連によれば、二〇〇九年三月現在、債務を抱えている約一〇八四万一千人の利用者のうち、三一八万三千人が三ヵ月以上にわたり返済が滞っているということである。

また、全情連によれば、三社借入れの利用者は一五二万人、四社借入れの利用者は九四万七千人、五社以上借入れのある利用者は七二万七千人となっており、三社以上借入れのある利用者は、合計三一九万四千人となっている。三社以上借入れのある利用者の多くが、すでに年収の三分の一を超えて借入れている可能性が強い利用者と思われ、新法が完全施行され、総量規制が導入されると、返済資金の調達が困難になる利用者層と推定される。多重債務問題の大きな要因となってきたのが、クレジット・サラ金・商エローンなど貸金業者の高金利である。

現在、基準貸付利率(従来「公定歩合」とされていたもの)は年〇・三%、銀行の普通預金金利は年○・○四%という超低金利状態であるにもかかわらず、貸金業者の貸出金利の大半は、これまで年二五~二九・二%の高金利となっており、このような貸金業者の貸出金利は、民事的効力(有効・無効)の限界となる金利を定めている利息制限法の制限金利(年一五~二〇%)は超えるが、刑罰が科される出資法の上限金利(年二九・二%)以下のいわゆる「グレーゾーン金利」となっていた。

大手サラ金業者は、銀行から年二%前後の低金利で資金調達をして、年二五~二九・二%もの高金利で貸出しをしていたので、莫大な利ざやが生じ、貸せば貸すほど利益が上がる状態となっていた。このため、多くの大手サラ金業者の営業担当社員には、貸出残高を伸ばすノルマが課されていた。また、利用者の給与明細や源泉徴収票などを提出させることなく、収入に関しては自己申告で、運転免許証や健康保険証があれば簡単に融資をするので、利用者の支払能力を超えた過剰貸付けが行われやすい状態となっていた。過剰貸付けは、返済困難に陥る多重債務者を生み出す大きな要因となっていた。

多数を占める貧困を原因とする自己破産

「生活苦・低所得」「病気・医療費」「失業・転職」「給料の減少」など貧困を原因とする破産原因は、破産原因の中で四五・八九%を占めており、自己破産者のほぼ二人に一人は、貧困が原因となって自己破産しているということになる。破産申立者の年齢は、「二〇歳代」 一二・○五%、「三〇歳代」二五・九八%、「四〇歳代」二三・九三%、「五〇歳代」二一・三九%、「六〇歳代」一二・五四%、「七〇歳代以上」三・九三%となっている。

破産申立者の月収は、「五万円未満」二六・八九%、「五万円以上一〇万円未満」一四・二六%、「一〇万円以上一五万円未満」一八・二八%、二五万円以上二〇万円未満」一六・六四%、「二〇万円以上二五万円未満」一二・二一%、「二五万円以上三〇万円未満」六・三一%、「三〇万円以上」三・四四%となっており、月収二〇万円未満の低所得層が約八割を占めている。

破産申立者の家族構成は、「単身」 一八・二〇%、「二人」二四・六七%、「三人」二一・三一%、「四人」一九・三四%、「五人」九・七五%、「六人」四・一八%、「七人」一・三九%、「八人」〇・五七%となっており、約八割が家族のいる破産申立者となっている。破産申立者の職業は、「給与所得者(常勤、派遣社員含む)」三七・一三%、「無職」二二・三〇%、「パート・アルバイト・期間社員」二三・五二%、「自営・自由業」五・八二%、「年金生活者」四・二六%、「主婦・内職」二・三〇%、「生活保護受給者」三・一一%などとなっている。

日弁連消費者問題対策委員会の「二〇〇五年破産事件記録調査」と比較すると、「無職」(三六・九三%→三七・一三%)、「パート・アルバイト・期間社員」(二〇・一二%→二三・五二%)などの自己破産者の占める割合が増加している。破産申立者の住居形態は、「本人所有」七・八七%、「家族所有」二八・一一%、「持ち家でない」六一・三九%などとなっており、破産申立ての九三%は住居を持っていない人の破産申立てとなっている。日弁連消費者問題対策委員会による破産事件記録調査結果をみると、生活苦・低所得などの貧困を原因とする破産の増加という最近の自己破産の特徴が浮かび上がる。