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自己破産の現状

二〇〇八年一年間における個人の自己破産申立件数は、一二万九五〇八件となっている。個人の自己破産申立件数は、二〇〇三年の二四万二三五七件をピークに減少傾向となっているが、引き続き高水準を保っているし、この一〇年間に自己破産申立てをした人は、一七〇万人を超えている。個人の自己破産申立ての大半は、クレジット・サラ金(消費者金融)・商エローン・ヤミ金融などから多額の債務を抱えて返済困難に陥った会社員、パート・アルバイト、主婦、年金生活者、生活保護受給者、中小零細事業者などの自己破産申立てとなっている。

ちなみに、二〇〇八年一年間の個人再生申立件数は、小規模個人再生二二八一〇件、給与所得者等再生二二四二件の合計二四〇五二件となっている。クレジット・サラ金・商工ローン・ヤミ金融の利用者の拡大や返済困難に陥る多重債務者の増加の背景には、貯蓄ゼロ世帯の増加、生活保護受給世帯の増加、非正規雇用の増加、働く貧困層(ワーキングプア)の増加、ネットカフェ難民の増加などに象徴される貧困と格差の拡大問題がある。最近の自己破産も生活苦や低所得など貧困を原因とする自己破産が多数を占めている。

日弁連消費者問題対策委員会の「二〇〇八年破産事件記録調査」によると、破産原因は、「生活苦・低所得」二六・三九%、「負債の返済(保証以外)」一一・六八%、「保証債務・第三者の債務の肩代わり」一〇・三九%、「病気・医療費」八・七〇%、「事業資金」七・八一%、「失業・転職」六・〇八%、「給料の減少」四・七二%、「住宅購入」三・九七%、「教育資金」二・九六%、「生活用品の購入」三・六三%、「浪費・遊興費」二・九九%、「名義貸し」一・三九%、「ギャンブル」 一・八〇%、「冠婚葬祭」〇・六一%、「投資(株式・会員権・不動産など)」〇・七四%となっている。

内閣における多重債務者対策本部の設置と多重債務問題改善プログラムの決定

新法の公布からおおむね三年後である二〇〇九年一二月末以降においては、金利規制と過剰貸付規制を始めとする貸金業規制が大幅に強化されることになるので、多重債務者の発生は大幅に抑制されることになると思われる。しかしながら、現在、サラ金を利用している人は一四〇〇万人を超え、返済困難に陥っている多重債務者は、二〇〇万人を超えるといわれている。政府は、現在存在する多重債務者対策に取り組むために、新法成立後の二〇〇六年一二月二二日、内閣官房に「多重債務者対策本部」を設置している。

多重債務者対策本部は、対策本部の下に設置された有識者会議のとりまとめを受けて、二〇〇七年四月二〇日、「多重債務問題改善プログラム」を決定している。多重債務問題改善プログラムにおいては、①丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化、②借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネット貸付けの提供、③多重債務者発生予防のための金融経済教育の強化、④ヤミ金の撲滅に向けた取締りの強化、などに取り組むことが決定されている。

同改善プログラムに基づき、二〇〇七年末までに、四七都道府県すべてに弁護士会や司法書士会、被害者の会、労働者福祉協議会(労福協)などが参加する「多重債務者対策協議会」が設置されている。二〇〇七年一二月には、政府の多重債務者対策本部、日本弁護士連合会(日弁連)、日本司法書士会連合会(日司連)が共催して全国の都道府県市町村四五〇ヵ所で、弁護士九三〇人、司法書士五〇〇人が参加した「全国一斉多重債務者相談ウイーク」が実施され、六千件を超える多重債務者の相談を受け付けている。

サラ金系の信用情報機関である全国信用情報センター連合会(全情連)の登録情報によれば、五社以上借り入れのある者は、二〇〇七年二月段階では一七六万八千人であったが、二〇〇九年三月段階では七二万七千人となっており、一〇〇万人近く減少してきていることが明らかとなっている。このことは、この間の取組みによって多重債務者が着実に救済されていることを示すものといえる。多重債務対策に関しては、①すべての多重債務者を一人残らず救済するための相談窓口の一層の充実強化、②ヤミ金融を完全に撲滅するためのヤミ金融対策の強化、③低金利の公的融資制度や生活保護制度などのセーフティネットの強化などがこれからの重要課題となってきている。

「貸金業の規制等に関する法律」の変更点

(1)法律の題名の改正等
①題名の改正
新法は、これまで「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業規制法)と呼んできた法律の題名を、「貸金業法」に改めている。

②目的の改正
新法では、第一条の目的規定に、「貸金業が我が国の経済社会において果たす役割にかんがみ」という文言を付け加えている(貸金業一条)。

(2)経過措置
①施行スケジュール
新法では、改正の内容によって施行時期が異なっており、四段階に分かれて施行されることになっている。第一段階の施行は、二〇〇七年一月二〇日に施行されており、超高金利(年利一〇九・五%超)貸付けや無登録営業などヤミ金融に対する罰則の強化が行われている。第二段階の施行(「本体施行」と呼ばれている)は、二〇〇七年一二月一九日に施行されており、①法律の名称の変更、②行為規制の強化、③監督の強化、④新貸金業協会の設立などが行われている。

第三段階の施行は、本体施行から一年半以内に施行されることになっており、①最低純資産の二千万円への引上げ、②貸金業務取扱主任者資格試験制度の創設、③指定信用情報機関制度の創設などが行われることになっている。第四段階の施行(完全施行)は、本体施行から二年半以内、新法の公布からおおむね三年(二〇〇九年一二月二〇日)を目途に施行されることになっており、①金利規制の強化(みなし弁済規定(グレーゾーン金利)の廃止、出資法の上限金利の引下げ、利息制限法の制限金利を超える利息契約の禁止、日掛け金融等の特例金利の廃止、保証料の規制など)、②総量規制を導入した過剰貸付規制の強化、③最低純資産額の五千万円への引上げ、などが行われることになっている。

②見直し規定
新法には、完全施行の前に必要があると認めるときは、所要の見直しを行う旨の「見直し規定」が置かれている(附則六七条)。

相談窓口紹介義務の創設

資金需要者等の利益の保護のために必要と認められた場合には、貸金業者は、資金需要者等に対し、借入れや返済に関する相談または助言その他の支援を適正かつ確実に実施することができると認められる団体を紹介するよう努めなければならないことになっている(貸金業一二条の九)。

(1)監督の強化
新法は、貸金業者に対する監督を強化するために、次に述べるような監督強化措置をとっている。

(2)業務改善命令の導入
新法では、業務規制違反に対し機動的に対処するために、内閣総理大臣または都道府県知事は、これまでの登録取消しや業務停止に加え、業務改善命令を出せることになっている(貸金業二四条の六の三)。

(3)行政処分の強化等
貸金等の業務に関し、法令または法令に基づく内閣総理大臣もしくは都道府県知事の処分に違反したときは、当該貸金業者に対して、登録を取り消し、または業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができるとともに、当該行為をした取締役等の解任を命ずることができることになっている(貸金業二四条の六の四)。

(4)業務開始義務
正当な理由がないのに、登録を受けた日から六ヵ月以内に貸金業を開始しないとき、または引き続き六ヵ月以上貸金業を休止したときは、内閣総理大臣または都道府県知事は、登録を取り消すことができることになっている(貸金業二四条の六の六)。

(5)事業報告書の提出
すべての貸金業者に事業報告書の提出を義務づけている(貸金業二四条の六の九)。

(6)過剰貸付規制の強化 総量規制の導入
旧法でも、過剰貸付けを禁止する規定(同法一三条)があり、「窓口における簡単な審査のみによって、無担保・無保証で貸し付ける場合の目処は、当該資金需要者に対する一業者あたりの金額について五〇万円、または、当該資金需要者の年収額の一〇%に相当する金額とすること」という金融庁のガイドラインもあったが、違反しても罰則もなければ、行政処分の対象にもならなかった。新法は、指定信用情報機関制度を創設するとともに総量規制を導入することにより、過剰貸付規制を大幅に強化している。

(7) 指定信用情報機関制度の創設
新法では、信用情報の適切な管理や全件登録などの条件を満たす内閣総理大臣が監督する指定信用情報機関制度を創設し、貸金業者が借り手の総借入残高を把握できる仕組みを整備している(貸金業四一条の一三~四一条の三八)。

(8) 総量規制の導入
自社からの借入残高が一〇〇万円超となる貸付けの場合には、貸金業者に年収等の資料の取得を義務づけ、調査の結果、総借入残高が年収の三分の一を超える貸付けを禁止するという総量規制を導入している。この総量規制に違反すると行政処分の対象とされることになっている(貸金業一三条、一三条の二~一三条の四、二四条の六の四第一項二号)。この総量規制も、金利規制と同様、新法の本体施行から二年半以内、新法の公布からおおむね三年後(二〇〇九年一二月末)に施行されることになっている。多重債務問題の大きな要因となってきた高金利と過剰貸付けに対する規制が大幅に強化されることになる結果、二〇〇九年二一月末以降は、多重債務者の発生は大幅に抑制されることになるものと考えられる。

書面交付に関する規定の整備

新法では、①連帯保証人について、事前書面および契約書面に催告の抗弁および検索の抗弁がない旨の記載を義務づける(貸金業一六条の二第一項、一七条三項)、②貸付けに関する契約のうち、資金需要者である顧客によりあらかじめ定められた条件に従った返済が行われることを条件として、当該顧客の請求に応じ、極度額の限度内において貸付けを行うことを約することを「極度方式基本契約」とし、極度方式基本契約等についての契約書面の記載事項に関する規定を整備する(貸金業二条、一七条)、③利息制限法の上限金利以下の金利での貸付けについて、相手方の同意を条件に、一定期間ごとの書面交付および書面交付の電子化を可能とする(貸金業一七条七項、一八条四項)、④貸金業者は、貸付けに関する契約を締結するまでに、当該契約の内容を説明する書面を当該契約の相手方となろうとする者に交付しなければならないこととする(貸金業一六条の二)、などの書面交付に関する規定の整備を行っている。

(1)帳簿書類の閲覧
新法によれば、貸金業者は、債務者等から帳簿の閲覧または謄写を請求されたときは、債務者等の権利の行使に関する調査を目的とするものでない等であると認められる相当の理由があるときを除くほか、その請求を拒むことができないことになっている(貸金業一九条の二)。

(2) 生命保険契約に関する規制
サラ金が借り手に生命保険を掛ける「消費者信用団体生命保険」に関する問題が社会問題化したため、新法では、生命保険契約に関し、①貸金業者が、借り手の自殺を保険事故とする生命保険契約の締結を禁止する(貸金業一二条の七)、②貸金業者が、貸付けの契約の相手方または相手方となろうとする者の死亡によって保険金額の支払をすべきことを定める保険契約を締結しようとする場合において、これらの者から同意を得ようとするときは、当該同意を得るまでに当該保険契約の内容を説明する書面を交付しなければならないこととする(貸金業一六条の三)ぐなどの規制を行っている。

(3) 公正証書に関する規制の強化
公正証書に関するトラブルが多発しているため、新法は公正証書に関し、①貸金業を営む者は、利息制限法の金利を超える貸付けの契約について、公正証書の作成を公証人に嘱託してはならないこととする、②貸金業を営む者は、公正証書の作成を公証人に嘱託する委任状を取得してはならないこととする、③貸金業者は、公正証書の作成を公証人に嘱託する場合は、あらかじめ、公正証書により直ちに強制執行に服することになる旨等について、書面を交付して説明しなければならないこととする、などの規制を行っている(貸金業二〇条)。

新貸金業法の成立

自主規制ルールでは、毎月の返済総額が原則として顧客の月収の三分の二年収の三六分の一を超えないようにするなどの過剰貸付け防止に関するルール、親族の冠婚葬祭時・年末年始・入院時・罹災時の取立てを禁止するなどの取立行為に関するルール、テレビCMは午前七時から午前九時までおよび午後五時から午後一〇時まで自粛する、ギャンブルや風俗情報に関する専門誌やインターネットのホームページへの広告を禁止する、などの広告に関するルールなどが定められている。自主規制ルールを守らない業者に対しては、協会は、除名などの処分ができることになっている。

(1)行為規制の強化等
新法では、取立行為規制の強化、禁止行為の追加、生命保険契約の締結に関する制限、公正証書に関する規制の強化など様々な行為規制の強化等が行われている。

(2) 取立行為規制の強化
新法では、①債務者等から弁済等の時期について申出を受けている場合において、正当な理由なく、日中に電話、訪問等による取立てを行うこと、②債務者等から退去すべき意思を示されたにもかかわらず、居宅や勤務先等から退去しないこと、③禁止行為のいずれかを行うことを告げること、などの取立行為が禁止行為として追加されている(貸金業二一条一項二号、四号、一〇号)。
 
(3) 禁止行為の追加
さらに、新法では、①顧客等に対し、虚偽のことを告げ、または貸付けの内容のうち重要な事項を告げない行為、②顧客等に対し、不確実な事項について断定的な判断を提供し、または確実であると誤認させるおそれのある行為、③保証人となろうとする者に対し、主たる債務者が弁済することが確実であると誤解させるおそれがあることを告げる行為、④偽りその他不正または著しく不当な行為、⑤利息制限法を超える利息の契約を締結し、利息を受領し、またはその支払を要求する行為、などの行為を禁止行為として追加している(貸金業一二条の六、一二条の八)。

(4) 勧誘に関する規制の強化
新法では、①貸金需要者等の知識、経験および財産の状況または貸付けの契約の締結の目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って資金需要者等の利益の保護に欠け、または欠けることとなるおそれがある行為、②貸付けの契約の勧誘を受けた資金需要者等が当該契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為、などの勧誘行為を禁止している(貸金業一六条三項、四項)。